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ぼくは女装に手を出した(三)

(二)に戻る


「もう……、きちんとおむつして寝なさいよ」

かあさんは濡れたシーツをせかせかとベッドから剥ぎ取り、
吸収しきれずにベッドの上に残ったおしっこの水滴を
そのシーツで拭き取りながら呆れたように言った。

ぐしょぐしょに濡れたパジャマを脱いで母に渡すと
母はそれも合わせてシーツに包んだ。

「そうだ、今日は通院の日でしょ? 忘れずに行くのよ」

「あー、そうだった」

病院とは、心療内科の片桐先生のことだ。
ぼくのおねしょ癖は身体の問題ではなく心の問題らしい。
だから、そういった子供の心の問題などを取り扱うことを専門とした
お医者さんに診てもらって少しでもこのおねしょを軽減できないか、ということで
二週間に一度、片桐先生のところへ通院している。

片桐先生のところへは結構長く通院しており、
小学三年生の頃以来ずっとである。

ぼくは三年生の頃から何故か頻繁におねしょするようになってしまった。
何故、急におねしょするようになったのかは分かってないし、
当時のことについては記憶があやふやでよく覚えていない。

ただ、なんとなくあずさが原因であるような気がしている。
彼女がいつもあんなふうにぼくをいじめるから、きっとストレスがたまっているのだ!
……そう思っている。

ちなみに、片桐先生のところに通ってもおねしょは治る気配はまったくない。

それでも診療所に通うことを欠かさなかったのは、
母親の強い指示によるものだった。

母はぼくがおむつをして寝ていても何も言わないし、
むしろ「おねしょするくらいならおむつしなさい」という感じだが、
それでもぼくのおねしょが治らないことについては親として心配なのかもしれない。

放課後、かあさんに言われたとおり、診療所に行った。

「やあ」

先生はいつも通り、もの静かな様子でデスクの椅子に座っていた。

診察室は六畳ほどで、小さなベッドが横にあり、
壁には体や心の仕組みが云々といったことを
図解で書いたポスターが多少色あせ気味に数枚貼られていて、
先生が座る灰色のデスクの端には沢山のプリント類がところ狭しと積まれていた。
先生はそのプリント類の中からぼくのカルテを探し当ててこちらを向いた。

「先生、実は……」

ぼくは今日の診療よりまず先に先生に聞きたいことがあった。
それはこの間の、夢の時に出たあれが何であるかだ。

昨日の夜以来、ずっとあのことで不安な気持ちに駆られて仕方がなかった。
先生にちょいとそれを話して一言見解をもらえたらぼくも安心できると思ったのだ。

かなり恥ずかしい気分ではあったが、
それを抑えてぼくは昨日のことを先生に打ち明けた。
先生はぼくが話し終わる前に早々に察しがついていたようだ。

「それは夢精だね。君も大人の仲間入りだな」

予想通りの答えが返ってきた。
先生はぼくを安心させるように朗らかな口調でそれを伝えたが、
それがやはり夢精であったことに、ぼくは気分が沈んだ。

ぼくからすれば、むしろ他の病気の方がまだ気が楽だったのだ。

「やっぱり、そうなんですね……」

「ん? なんだか落ち込んでいるね?」

先生はぼくの顔を覗き込んだ。

「……なんていうか、急だったから……こんなこと体験するなんて……。
 ぼく……まだ大人にはなりたくないんです」

「ほう、それはどうして?」

先生は興味深そうに尋ねた。

「なんていうか……その、夢精……したとき、すごく悲しい気持ちになりました」

「それは何故かな?」

「よく分からないんですけど、何かを無くしてしまったような気がして……」

先生はフムと顎を当て、すこし間を置いたあと

「ま、初めての時は不安になるよね。 先生だってそうだったんだよ」

と言った。


「そうなんですか……」

うなだれたぼくの肩に先生はポンと手を置いて少しゆすって、なだめるように言った。

「皆経験することだからね。あまり気にしなくていいんだよ。
 ま、何か異常や不安を感じたらいつでも相談してね」

「はい……」

「うん。それじゃあ診察しようか。最近、おねしょは?」

「相変わらず……です。今朝もしてしまいました」

先生は小さくうなづくと、体をぼくの方に向け、
目に力を入れてここが要点であると言わんばかりに言った。

「前にも何度か言ったけれど、おねしょをしてしまう子には
 心因的な問題を抱えている子が少なくないんだよ。
 例えば受験のストレスとか、クラスでうまくいっていないとか、
 将来を不安に感じているとか、 思春期の頃は特に心が不安定になりやすいからね。」

「まぁ、そういうのは無くもないですけど、人並みなんじゃないかと……」

「ふむ。最近変わったことは?」

「……特に……ないですけど」

ぼくは女装のことについては黙っておいた。
いくら先生でも、このことについては話す内容ではないと思ったからだ。

「フム……」

先生は続けて、もっと深く聞き出したいことがあるようで質問を重ねた。

「ガールフレンドとは上手くいってるかな?」

「あずさのことですか?この間も酷いことを言われました。
 『気色わるい』って。……何故そんなことを言われることになったのか、
 理由はちょっと言いたくないですけど……」

こうやって話しているうちに、あの時の憤りがふつふつと蘇ってきた。

≪そうだ、何も『気色悪い』だなんて言わなくてもいいじゃないか!≫

「……」

「君が話したくないのならば無理に話すことはないよ」

ぼくの憤りを感じ取ったのか、先生はそのことに深く触れようとはしなかった。
先生は眉間にシワを寄せ、深妙な表情をしたが、
そこから話が先に進むことはなかった。
その後はなんでもない雑談をして診察は終わった。

診療所から出て、家路につくと五分もしないうちにぼくは道端で足を止めた。
前にあずさが立っていたのだ。どうやらぼくを待っていたようだった。
彼女はぼくの存在に気づくと後ろ髪をかき分けてゆっくりとぼくに近づいてきた。

「あんた、まだここに通院してるんだ?」

「おかげさまでね」

彼女を無視して家の方角へ歩いた。
ぼくが彼女に強気にでるのは珍しい。
先ほどの怒りの残滓がぼくをそうさせたのだ。

しかし、あずさはぼくの態度に怯むどころか逆に好奇心を抱いたようで、
今から何か楽しいことが起こるとでも言わんばかりに、
興味深そうにぼくの前に回り込んで言った。

「おかげさまって、どういうことかしら?」

ぼくはあずさに目を合わせないまま彼女を避けて押し黙って足を進めた。
しかし、彼女も懲りずに無邪気な笑みを連れてぼくについてくる。


ぼくは無視することで抵抗の意思示したが、次第に目頭が熱くなってきた。
本心ではこういうことをしたくなかった。
あずさとはなんだかんだで幼なじみだし、本当はぼくは彼女と仲良くしたかったのだ。

でも、あずさがこんな風だから、
ぼくは自尊心を守るためにもこうせざるを得なかった。
疚しさと、意地がぶつかり合いがぼくの瞳を潤ませた。

それでも、ぼくは息を整えて涙を抑え、
もう彼女の言うことに、絶対耳を貸さないと決意し、
憤然と前を向いて彼女の横を通り過ぎた。

「あんた、まだ女の子の服着たいと思ってんの?」

「……」

ぼくは無視を続けて歩調を早めた。
彼女は立ち止まり、ぼくの後ろ髪を引くように言った。


「そんなに女の子の服が着たいなら……私の服あげようか?」


「……えっ?」


ぼくは思わず足を止めた。


「嘘よ」


あずさはぼくの心を弄ぶことにかけては天才だった。

ぼくの心の隙間を見つけて、
そこからいとも簡単にぼくの決意を踏みにじるのである。
これには大人しいぼくも激憤に駆られずにはいられなかった。

「なんなのさ、一体!? なんであずさはぼくにこんないじわるするの!?」

ぼくは絶叫した。


「あんたさぁ。いくらあんたが女装したって、
 女の子にはなれないんだから、諦めなさいよ」


「あずさに関係ないだろ! ほっといてよ!!」


ぼくは逃げるように走った。涙の玉が瞳からこぼれた。
自分が恥ずかしくて仕方がなかった。


一瞬でも彼女の甘言に耳を貸したばかりに、
さっき決めたばかりの決意に水をぶっかけられて笑われたのだ。

だがしかし、あずさの言葉は逆効果だった。
ぼくの逃げ道は女装以外になくなっていた。

ぼくの心を癒してくれるものは女の子の服以外になかった。
それがなければ、ぼくには何もなくなってしまうような
そんな気分にさえなっていた。

もうそんなところまで、ぼくの女装願望は強くなっていたのだ。

夜、ベッドの中にうずくまって本日の傷心に浸っているうちに、
(寝る前は大体そうするのが、ぼくの癖なのだ)
女の子の服が恋しくて愛おしくてたまらなった。

女の子の服を手元に置くとなると、親に見つかったりする危険も伴うが、
ぼくの欲求はもはやそのリスクを打ち超えていた。
抱いていた空想を現実のものにする時が来たのだ。

≪女の子の服を買おう!そうだ、佐倉に一緒についてきてもらって
 どんな服買えばいいとか、相談してみよう!≫

ぼくは再び固い決意を胸に秘めて眠りについた。


――その日、ぼくはまた夢を見た。

土砂降りの雨の中、ぼくは小学生の頃に戻っており
ランドセルをからって大きな川の傍にある河川敷を歩いていた。

この川には見覚えがある。
ぼくの家から歩いて十五分ほどにある川で、
小学校への通学路だった。

いつもは穏やかで晴れの日は家族がひなたぼっこに来たり、
健康志向のおじさんなどにもランニングスポットとして人気を博しているこの川であるが

夢の中では雨のせいで増水して泥を含んで茶色く染まっており、
大きなうねりを伴いながら力強く流れていた。

向こう岸は巨大な鉄塔がいくつも立ち並んでアーチを作り、
その根元には黒い森が世界を塀のように囲んでいて、
ぼくを漠然と不安な気持ちにさせた。

この夢は何故かよく見る。
そして目が覚めると決まっておねしょしているのだ。


今もこうしておねしょという単語を思い浮かべると、
夢の中で強い尿意を感じ始めてきた。

≪ああ、このままだとおもらししちゃうな……、でも、
 この雨の中だし、このままおもらししちゃってもいいかも……≫

夢の中のぼくは尿意に寛容だった。

≪温かい感覚が広がっていく……なんだか気持ちいい。
 あっ、おしっこがスボンから溢れてくる……≫

スボンから滴り落ちるおしっこを追ってくるぶしに視線を置くと、
いつの間にか川が増水して流れが足首にまで及んでいた。

水はおしっこと同じくらいの温度になっていて気づかなかったのだ。
ぼくはパニックになり、川の流れから這い上がろうとするものの、
水かさはどんどん増えていき、膝から胸へあっという間に到達した。

≪助けてっ!誰か助けて……!≫

なんとか顔を水面の上にしてもがきながら助けを呼ぼうとするが、
それも虚しく、水かさはとうとうぼくの首を超えて口に流れ込んできた。

≪苦しい!溺れる!!≫

とうとう足が地面から離れ、激流に飲み込まれた瞬間、はっと目が覚めた。

部屋の中はこの間射精したときと同じように真っ暗で、まだ夜中だった。
あたりは静寂に保たれており、時計がコツコツと秒を刻む音だけが響いていた。
ぼくの体は全身、汗でびっしょりとなっていた。

パジャマの上からおむつに手を当ててみると、
どうやら大量におねしょしてしまったようで、
おむつがもっちゃりとして吸収量の限界近くまで
大きく膨らんでいるのが分かった。

≪寝る前に少し水を飲みすぎたかな……≫

おむつの容量的には穿き替えないとまずいところだが、
まだ夢の恐怖の余韻が残っており布団から出ることが出来なかった。

ぼくは部屋の電気をつけたうえで布団をかぶり体を丸めて、
おむつの重みを感じながら再び目を瞑った。

ぼくは女装に手を出した(二)

(一)に戻る

――

家に帰ると、ぼくは自分の部屋のベッドに倒れこんだ。

「女の子の服が着たいんだ!」

その言葉が頭の中で何度も繰り返し再生されていた。
この告白に佐倉を選んだのは、ぼくに女装を勧めてくれた彼女であれば
ぼくが、本心から女の子の服を着たいと打ち明けても、
さほど抵抗を示さないのではないかと思ったからだ。
それに何より、彼女とはクラスで一番仲のよい友達でもあった。

とはいえ、彼女に告白をすることで今の関係に微妙な亀裂を生んでしまったり、
あるいは青い顔をされて危ない奴として距離を置かれてしまう懸念も僕の中にはあった。

彼女に「女装したい」ということを告白することは、
ぼくのこれからの学校生活に多大なるリスクを与える可能性があった。
例えば、クラスメイトの三枚目が女装したいと言ったとしても

「ああ、あいつがまたバカなことを言ってる」

で済むだろうが、スクールカーストでもいわゆる『ナード』あたりに位置するぼくがそんなことを言おうものなら、
皆はそれを冗談だとは思わないだろう。


たちまちに足が百本生えた不快害虫でも見るような目で見られ、
残りの学校生活は忌諱されながら日陰に隠れて過ごすことになることは間違いない。
残念ながら、冗談が許される人とそうでない人という格差は間違いなく存在するのだ。


無論、ぼくが女装したいと言ったところで、
佐倉に限ってそれをむやみに喋り散らすようなことはしないだろうけれど、
こういったことはどこから洩れるか分かったものではない。
それでも、そのような危険を省みず告白したのは……ぼくは彼女に甘えたかったのかもしれない。

彼女は昔からぼくに優しかった。

あずさがぼくに行き過ぎた意地悪をするときも、彼女はそれを制止しようとしてくれた。
ぼくがあずさに泣かされた時もいつも慰めてくれたのだ。
ぼくはそんな佐倉の優しさに気恥ずかし思いをしながらも、彼女の優しさに甘えていた。


彼女との付き合いの中で、思い出深いエピソードが一つある。
それはぼくが小学生二年生の頃の出来事だ。
ぼくと佐倉とあずさの三人で学校から家に帰っている途中だった。
ぼくたちは帰りがてら、『マグマごっこ』 をしていた。

マグマごっことは、道路に張り巡らされるアスファルトをマグマに見立て、
マンホールなどを踏み場にして移動する小学生お決まりの遊びのことだ。

ぼくたちはガードレールの根元や、民家と道路との継ぎ目のコンクリートを足場にして
マンホールの上に飛び乗ったり、細いブロックを綱渡りでもするかのようにバランスを取りながら、
なんとかアスファルトを踏まないようにして帰宅していた。
その途中でぼくは猛烈な尿意を催したのだ。

元々、学校から出る前には薄らかな尿意を感じていたけれど、
まだ急ぐほどのものでもないだろうと思って我慢していたが、
こうやってだらだらと遊びながら帰るうちに、
気付けばもはや抜き差しならぬほど状況にまで尿意は強まっていた。

ぼくはもうマグマごっこどころではなくなり、
トイレに行きたいと、股間を抑えて足踏みしながら二人に訴えた。

しかし、あずさはそれを見てぼくをいじめる遊びを閃いたらしく、にやりと笑った。
その瞬間、ぼくは自分の失敗に気付いた。

あずさに困っている顔を見せてはならない。
彼女にそれを見せると余計に困らせてやろうとするからだ。

案の定、あずさのイタズラ心に火がついた。
彼女はニヤニヤしながらルールを追加した。

「途中で止めるのはナシよ。 マグマ踏んだら罰ゲームだからね」

『罰ゲーム』 これは彼女のお決まりの言葉だった。

彼女は常に刺激を求めずにはいられない性質で、自分勝手なルールを作っては、
それを守れなかった人間を彼女オリジナルの刑罰に処すのが何よりのお楽しみなのだ。
彼女の『罰ゲーム』は苛烈なものが多く、


公衆の面前で三十分ずっと動いてはならないという、通称「一時停止の刑」とか、
ぼくだけ指定のひらがなを使ったら殴られる「限定しりとり」など、
どこでそういうレシピを仕入れているのか分からないが、とにかく精神的にきついものが多い。
しかも、彼女はそれを必ず実行させるのだ。
そして反故することを絶対に許さない。何があっても貫徹させるのだ。

だからこのマグマごっこも易々とやめるわけにはいかなかった。
「大丈夫?」と心配してくれる佐倉に応ずるのも忘れて、
歯を食いしばりながら出来るかぎり最寄りの公園へ急いだ。

しかしながら、アスファルトを踏まないようにして向かうとなると、
足が踏み出せる場所なんて歩道に一割も無い。
その一割未満の領域を使って進むとなると、当然ながら普通に歩くよりも更に遅い。
場所によってはルートを変更する必要がある。

更に、身体をよじりながら歩いたり、ジャンプしたりしながら進まなければならないため、
尿意を我慢する労力は通常時の倍になっていた。

苦しい体勢になるたびに膀胱がズキンズキンと刺激され、背中や手に脂汗が滲んだ。
それでも、ぼくはなんとか公園の前まで辿り着くことができた。
そのころには生まれた子鹿のように内股でブルブル震えながら股間を抑えてぜいぜいと息を切らせていた。
あとはマンホールを二つほど足場にジャンプして、向かいの歩道までたどり着けば公園だ。
ぼくは尿意の波が弱まるタイミングを見計らい、最後の力を振り絞ってジャンプした。
一つ目のマンホールには無事着地した。
そのまま間を入れず、勢いに任せて二つ目のマンホールに向かって飛んだ。
これも尻もちをつきながらも成功した。
ここまで我慢できたのは奇跡だった。
ぼくはおしっこが膀胱から出ていく感覚に飢えて気が狂いそうになっていた。
しかし、これをクリアすればあとはトイレに駆け込むだけだ。


歯を食いしばり、最後の跳躍を決行した。
僕の右足はギリギリのところでアスファルトを飛び越えて、レンガ敷きの歩道に着地した。

やった!これでトイレに行ける!
と思ったのも束の間。

じょろりと、少しばかりおしっこが出た。
下着にじわっと温もりが広がった。

ぼくは極度の緊張状態の中で、この想定外の温もりに思わずビクリとしてしまい、
膀胱という暴れ馬の手綱を離してしまった。


《ジョロ……ジョロロロロロ……》

そこから先はいくら止めようとしても溢れ出すおしっこは止まらなかった。
自分の意思とはまったく無関係に、もの凄い勢いでおしっこが流れ出た。


「あっ! ああああぁぁぁ……」
おしっこはすぐにブリーフをすり抜けて七分丈のズボンを湿らせた。
お湯をこぼしたような温もりが下半身全体に渡りじんわりと広がる。
ズボンは藍白のデニム生地だったので、
お股の方からじわりと、誤魔化しようのないほど色濃い染みを作った。

そしてそれはぼくの意志に逆らってどんどん広がっていった。
更には太ももを伝ってズボンの外からもボタボタと滴り落ちて、
くるぶしにまで到達し、白い靴下は薄黄色に染められた。

「わっ!……るい君がおもらししてる!!」

気付いた佐倉が声を上げて言った。

それに続いて、いじわるそうにあずさが言う。

「あ~!ほんとだ~、るいがおしっこもらしてる~!」

「だめ……、だめぇぇぇぇ……!」

《じょぼぼぼぼぼぼぼ……ばしゃばしゃばしゃ》

おもらしの勢いは止むことを知らない。
おしっこが滝のようにズボンの足口やお尻から漏れ出し、
地面にしたたり落ちて恥ずかしい音を作っていた。
「あ~っ、とまんない! みないで! みないで~!」

右手で股間を抑えながら、左手をパーにして二人に向け、見ないように手振り身振りするも
佐倉はぼくが盛大におもらしする姿を見て信じられないと言わんばかりに呆然としていた。

一方、あずさは自分の計算通りに事が運んだことに大変ご満悦な様子で、
腕を組んで恍惚を含んだ笑みを浮かべてぼくを見下ろしていた。

《しょろろろろろぉぉ~》

おしっこはまだまだ止まる様子を見せず、ぼくの足元には水たまりが出来始めていた。
「うわぁー、すごいいっぱい出てるねー」

あずさはにやにやといじわる顔でぼくを責めたてる。

「ぐすっ…ふぇ……うぇぇぇ~ん! だって、だってあずさが、あずさが〜」

おしっこが完全に出終わるとそこには、大きな水たまりが出来て
アスファルトからむわりとおしっこの匂いがたちこめた。

「もう二年生なのに、るいったらはずかしい~」

「うわぁぁぁぁん!!」

あずさはこうやって、ぼくを言葉でなじるのが趣味だった。
あずさは生来からこういった嗜好を持っているのだろう。

おしっこをすべて出し切ったあとも、
しばらくズボンからぽたぽたと水滴がこぼれ落ちていた。

「うえええええええん……」
佐倉は泣きじゃくるぼくの傍へ近づき

「るい君、大丈夫? 仕方ないよ……」

と言って頭を撫でてくれた。

「あ、あずさが、あずさがいじわるするから〜!」

ぼくはおもらししてしまった恥ずかしさや情けなさで胸がいっぱいになった。

泣きじゃくるぼくを見た佐倉はいたたまれなくなり、もちまえの慈愛精神がくすぶられたのだろう。
彼女は「スボン、洗ってあげるね」と言って、ぼくの手を引いて公園のトイレに連れていってくれた。
そして、ぐしょぐしょにおしっこで濡れたズボンを嫌がりもせずに
まるでお母さんが小さい子をお世話するように脱がせてくれてくれたのだ。

「ほら、あずさちゃんも手伝ってよ……元はあずちゃんのせいなんだから!」

「えー、しかたないなぁー」

流石のあずさも少々罪悪感を感じたのか、佐倉からズボンを渡されると、
後処理をするために、人差し指と親指でつまんで、洗面台に放った。

二人は洗面台に横並びになって、
ぼくのズボンとブリーフをそれぞれ手分けして、水道の水で洗い流してくれた。
ぼくはその間、下半身は素っ裸でお尻丸出しの状態になっていたので、
シャツを伸ばして下半身を隠すようにして、二人が洗ってくれるのを待った。

洗濯は五分ほどで終わった。

おもらしで黄ばんでしまったブリーフも元の色を取り戻していた。
ズボンも丹念に現れていた。

ぼくは受け取ったブリーフとズボンを穿いた。
ある程度しぼって水を切っていたものの当然ながらまだしっとりとしていた。

「うう……つめたい……」

「だって仕方ないよ〜」

困り顔で言う佐倉。

一方、原因を作ったあずさは


「文句言わないの!」

といってぼくを突き放した。


「ぐすっ……。うん……」

ぼくかはこのとき、自分の惨めさに歯がゆい思いをしながらも
佐倉から受けた優しさは僕の心に温かいものをもたらした。


告白した直後に話を戻すと、ぼくの告白を聞いた佐倉は、
ぼくが公園でおもらししたあの日と同じように、信じられないといった様子で目をまんまるにした。
顔はみるみると赤くなり、肩を小刻みに震わせた。


ぼくは恥ずかしさで頭が真っ白になり、耐えられず目を背けて下を向いた。
それはほんの数秒の沈黙だったが、ぼくには何分にも感じられた。

その間にも様々な思いが頭を駆け巡っていた。

ぼくはこの告白をして一体どうしようって言うんだろう?
ぼくは佐倉に何をして欲しいのだろう?
彼女に女装願望を告白したのは、この葛藤をただ、誰かに吐露したかっただけなのかもしれないのではないか?
ぼくは、ひょっとしてとんでもない行為をしてしまったのではないか……?
ぼくの中で早くも後悔の念が頭ををぐるぐると回り始めた時、佐倉は言った。

「……わたしも、るい君が女の子の服を着たところ、見てみたい!」

まさかの言葉に、ぼくは一瞬、自分の耳を疑った。
しかし、それは聞き間違いなどではなかった。
確かに佐倉は言ったのだ。ぼくが女の子の服を着たところを見てみたいと。

「ほ……ほんとに?」

恐る恐る顔を上げて、佐倉の方へ目を合わせると
彼女はぼくの両手を包んで感激した様子でぶんぶんと手を振った。

「るいくんなら、きっとどんな服でも似合うよ!」

佐倉はぼくの願望について、拍子抜けするほどすんなりと受け入れてくれた。
その日、ぼくは数年ぶりに佐倉と一緒に帰った。

その時の彼女との会話は、どんな服が好きかだとか、今度一緒に服を買いに行こうとか、
それともわたしのお古の洋服をあげようかとか、そういう内容だった。

告白したぼくより、むしろそれを受けた佐倉のほうが興奮気味で、とにかく絶え間なく話し続けた。
佐倉は前からぼくに女装させることに興味を持っていたらしい。
ぼくも照れくさいやら嬉しいやら、なんとも夢心地で妙な非現実感に浮かされていた。



家に帰ると緊張と喜悦の相転移から、どっと疲れてベッドに倒れこむと、
そのまま眠り込んでしまった。


ぼくは夢を見た。
澄み切った青空の下、たんぽぽの綿毛が風に舞う新緑の草原で、
ぼくは白いワンピースを着てにこやかに笑いながら踊っていた。
その夢の中では、ぼくは正真正銘の女の子なっていた。
ステップを踏んでくるり回ると、スカートのすそがひらりと舞い上がって波を作る。
それがとにかく楽しくて、飽きもせず何度も回っていると、
いつの間にかぼくの格好とは対極的に黒いワンピースを着た小さな女の子が立っていて、
笑みを浮かべながらぼくをじっと見ていた。

ぼくはその女の子に不気味さを覚えた。
女の子はぼくの傍へ近寄り、ぼくの手を引いて無理矢理どこかに連れて行こうとした。

≪この子は誰だろう……?≫

女の子の顔を見ようとしても、視界がぼんやりとしてよく分からない。
ぼくは女の子に抵抗できず、引っ張られるがまま草原を駆けた。

しばらくすると草原に突如ドアが現れ、女の子はそのドアを引いた。
中は何もない暗い部屋だった。女の子はそこにぼくを閉じ込めた。

女の子は戸惑うぼくのことなどお構いなしに、
いたずらっぽく笑みを見せると、ぼくのワンピースの中にもぐりこんだ。

「やっ、な、何をするの……?」

女の子は何を思ったかぼくの下着に手をかけ、下ろそうとしたのだ。

ぼくは下着が下がらないように、ワンピースの上から下着を押さえつけようとしたが、
そこには女の子の頭があり、どうすることもできず、なすがまま女の子にすべて引き下げられてしまった。

「やめて!  だっ…だめだよ!」

ぼくは女の子になったばすなのに、股下には『到底認められぬもの』があった。

「なんで!?」

叫びをあげた瞬間、ぼくのそれが温かい何かに包まれた。

「ひぃっ!? な、何……してるの?」

ワンピースの中の出来事であるためそれを見ることはできなかったが、
女の子はぼくのそれを口にくわえて舌の上で転がして遊んでいた。

「や、やめ……て」

今までにまったく経験したことない未知の感覚に、声を引きつらせて止めるよう懇願したが、
女の子にはぼくの言葉はまるで聞こえていないようで、
それを緩めるどころか、今度は……を頬張ったまま上下にピストン運動を始めた。

「あっ……ああ!」

逃げようにも、やめさせようにも、ぼくはその感覚に支配され動けなくなっていた。
彼女は怯むことなく貪るように暴力的に、それでいて献身的にそれを弄んだ。

「だめ!やめてよぉ!」

やがて、ぼくの感覚は風船のように膨らんでいき、
その感覚の根元を中心にぼくの身体はドクンドクンと大きく脈を打ち始めた。


「あっ……やめっ!?  ひあっ!? な、なに!? なんかきちゃう!」

身体はさらに鼓動を強め、ぼくは何も考えられなくなっていた。
腰から下は自分の意思から離れ、鼓動にあわせて刺激を求めるように跳ねあげていた。
膝はガクガクと震え、一段と強い感覚が大波のように押し寄せてきた。

「だめっ!もうだめぇ……!」

その波が最高潮に達した時、下半身がドクンとして
一段と大きく突き上がり景色が真っ白になった。



「はっ!?」

ぼくは飛び上がって、あたりを見回した。そこには見慣れた自分の部屋があった。
もう陽が暮れており、部屋の中は外から差し込む街灯の光が僅かに差し込んでいて、
そのおかげでようやく部屋の輪郭を確認することが出来た。

疲労感が全身に染み渡っており、背中が汗でびしょびしょになっていて、全身がじんじんと鈍い感覚を放っていた。

ぼくは起き上がって部屋の電気をつけると、深くため息をついた。

≪はぁ……夢かぁ……≫ 

なんだか、気持ちの悪い夢だった。
下腹部には汗ではない、別の違和感を感じた。

≪はっ、やっちゃった!? おむつしないまま寝ちゃったぞ……≫

しかし、それはいつものおねしょではなかった。

恐る恐る、股のほうに手をやると、どろりとした生ぬるい粘液質のものに触れた。
指についたそれを引き上げると、白濁の粘液が中指と人差し指の間に糸玉を作っていた。

「ひぃ!?」

ぼくはそれをまじまじと見つめた。
自分の体からこれが排出されたという事実を認めるには少々の時間がかかった。
重苦しい気分になりながら下着を脱いで、白いどろどろをティッシュで何度も拭いた。

≪これって……保険の授業で習ったアレじゃ……≫


初めての射精だった。
快感なんかより罪悪感が心をうめつくしていた。

射精がどんな現象であるかぼくは知っていた。
しかし、自分の身にもそれが起こるとは想像してもいなかった。



もう昨日までの自分にはもう戻れない気がした。
大事な何かを今、失ってしまったような、そんな喪失感がぼくを襲った。

射精をしたことによって、ぼくはもう、どうやっても
男性として生きていかねばならぬことを宿命づけられたような気分になった。
時間が、ぼくがぼくのままでいることを許してくれなくなったのだ。

悲しい気持ちが込み上げて、自然と涙が出てきた。

「うっ……うう……」

「あんた、何で半裸で泣いてんの?」

「うわぁ!?」

気付くとあずさが部屋の入り口のドアを後ろにして立っていた。
ぼくは急いで布団に潜り込んだ。

「あずさ!?なんであずさがここにいるの!?」

「何よ、おばけでも見たような顔して。おばさまから夕食のお呼ばれに預かったのよ。
 準備が終わってもあんたが一向に部屋から出てこないから、こうして呼びに来てやったわけじゃない」

「……ぼく、今日は夕食いらない」

「え、なんで」

「ちょっと、食欲がないんだ。それから!ぼくの部屋に勝手に入らないでよ!」

「そう……せっかくおばさまが作ってくれたのに」

「……いいから早く出て行って!」

「何よ……可愛げのない奴ね」

「早くっ!」

「ふん……、にしてもこの部屋、何か変な臭いがするわね?」

そう言い残すと、あずさはドアも閉めずに下に降りて行った。

ぼくは再びベッドに倒れて泣いた。

そしてそのまま、またおむつをするのを忘れて眠ってしまった。
今度は夢は見なかったけれど、朝起きるとぐっしょりとおねしょしていた。



(三)に進む

ぼくは女装に手を出した(一)

ぼく(星宮るい)は自分の部屋で、アルバムの中の七五三の写真をじっくりに眺めていた。
これはぼくの近頃の趣味であった。

写真には七五三用にきらびやかな着物を召した三人の女の子が写っている。
左は庵野あずさ、右は佐倉めぐみという同級生の女の子だ。
そして中央に写っているのは他でもない、ぼくなのだ。
(誤解の無いよう最初に断わっておくが、ぼくは男である)

この写真が撮られたのはぼくが七歳の時で、
今は中学二年生なのでかれこれ七年前のことだ。

何故、ぼくが女の子の着物を着ていたのかというと、
当時、もともとは男の子用の袴着る予定だったのだが、
先に着付けの終わったあずさや佐倉を見たときに、女の子の方がいいと思ったからだ。

彼女らの格好は赤やピンクのきらびやかな花菱模様や牡丹模様のあしらわれた
可愛らしい着物を召して、髪には紅い簪*かんざし*が添えられていて、
蝶のような華やかさがあった。

それにひきかえ、男の子の袴は青や黒を基調として飾りも少なく、
なんだか自分にとっては見栄えがよくなかった。
彼女らのお召し物が蝶とだとするなら、ぼくの袴などミミズも同然だったのだ。

今思うと、なぜそこまでこだわりを持ってしまったのかよく分からないが、
ぼくはどうしても女の子の着物を着たくなり、親にねだって困らせた。
頑として憚らず、地面に背を向けて足をばたばたさせてだだをこねた。
このことは今でもよく親からよくネタにされて笑われるのだが、
結局、ぼくは女の子の着物を召して、七五三を迎えたのだ。

そして出来上がったのが先の写真である。

その写真を何故ぼくが今更、しかも羨ましそうに眺めているかというと、
ぼくにはある秘密の願望があったからだ。それは『女装願望』だ。

理由はぼくの内気な性格にあった。
ぼくは小さな頃から女々しいと言われてきた。

それはぼくの外見としても小柄でなよっとした体型に加えて、
中性的な顔つきをしていたということが主な原因で、
周りからは「女みたい」だとかしょっちゅう言われてきたし、
実際に女の子と間違われるようなことだって一度や二度の話ではなかった。
そういうこともあって、周りからよくからかわれていたのだ。

とりわけ、僕の隣に写っている庵野あずさからは幼稚園の頃から今に至るまで、
まるで三歳か四歳児が乱暴におもちゃを扱うのと同じように扱われ、
内気で抵抗できないぼくは「男のくせに、男のくせに」と言われつづけてきた。


ぼくとしてもそんな暴虐的な彼女からは距離を置きたいところなのだが、
不幸なことに彼女とは家が隣同士だったし、更に悪いことに両親は
もともと女の子をもうけたかった様で、
あずさをまるで自分の娘のように可愛がっているし、あずさもそれに甘えて、
よく家に遊びに来てはご飯まで食べてたべたりしている。

そして、ぼくに対しては弟か子分のように理不尽な命令してはひどい目にあわせて
ケタケタと笑うのが彼女の生きがいなのだ。
このようにして「男のくせに」だの言われている間に、
ぼくの中に一つの願望が生まれた。

「ぼくだって好きで男に生まれたわけではない。こんなことならば、
 いっそのこと女の子に生まれればよかったのに」

これが思春期真っ只中のぼくに作用した結果が女装願望である。


それを更に増長させたのが、ぼくのおねしょ癖だ。あまり大きな声では言えないが、
ぼくはまだおねしょをしてしまう。
だから寝る時は恥ずかしながらおむつをしている。

たまにおむつするのを忘れて眠ってしまうのだが、
その時に限っておねしょしてしまう。


この事は、よく家に来るあずさですら知らない、僕のトップシークレットだ。
このことについては、本当に気を使っている。

あずさは突拍子もなくぼくの部屋に訪れるものだから、

おむつはいつも自分の部屋の奥にしまって、必要な時だけ取るようにしてるし、
おむつしないまま眠ってしまい、おねしょした時も布団は
絶対に外に干さないようにしている。

おむつを棄てる時も黒いビニール袋に包み隠したりと、
細心の注意を払うことでなんとか隠しおおせている。
もし彼女におむつのことがバレたりしようものなら、
どんな風になじられるかわかったものではない。
少なくとも、ぼくの学校生活は暗黒に閉ざされるであろうことは間違いない。

しかし、これもすべては自分が男であるからここまで苦しむのであって、
仮に女の子であれば、おねしょ癖だって可愛らしさの一つになるのではないかと
思ったのだ。

こうしていくうちに、ぼくの願望は日増しに膨らんでいった。

ぼくは十四歳になるが、まだ声変わりが始まっていないし、
背もたかくないし、体格も男らしいというよりは明らかに子供っぽい。
他の同級生と比べて発達が遅かった。
しかし、いずれはぼくも同級生と同じように声変わりが始まって、
体型も男っぽくなっていくのだろう。

であれるならば、女の子みたいな恰好ができるのも今のうちなんじゃないか。
その想いがぼくを突き動かそうとしていた。

その欲動が形になって現れ始めたものとして、まず髪を切らなくなった。
今では髪の毛は首の根元あたりまで伸びていて、後ろであれば、
ゴム紐で結ぶこともできるくらいだ。もう少し伸びたらセミロングくらいの
長さにはなるだろう。

これも他人に言えたものではないが、風呂上がりに髪を下ろして洗面台の鏡を眺めて、
女の子っぽく見える角度を見つけ出し、そこから自分が女の子になった姿を
妄想するのが密かな楽しみだった。

ぼくは自分が嫌いだ。ぼくには特技がない。
自己主張も苦手だし、自分に自信が持てずいつも自己嫌悪していた。
しかし、自分で言うのはなんだが、髪を下ろしたぼくは
結構女の子っぽい感じがしていると思う。そしてそれがたまらなく嬉しかった。
なよなよとして女々しくて情けないぼくでも、自分のことを好きになれたのだ。

そういったわけで、近頃はスマートフォンで女の子ものの服を検索したりして、
自分が女の子になったらどんな服が似合いそうだとか、サイズはどれで
色はどうするなどの妄想するのが趣味になっており、
その妄想は回を重ねるたびにどんどん事細かになっていった。

桜が咲く道でスカートをひらひらと波打たせながら、
ほかの女の子の友達と一緒に美味しいケーキ屋さんに向かったり、
街で可愛い服を探したりするのが女の子になったぼくの理想だ。


そこまで妄想を膨らませておきながらも、実際に女装ができていなかったのは、
そもそも自分に姉妹がおらず、また母の下着や服を拝借するのもの気が引けたし、
何よりぼくの求める女装とはまるでコンセプトが違っていたからだ。

女の子の服を手に入れようにも、ぼく一人で女の子ものの服屋にいくのも恥ずかしいし、
偶然クラスメイトの誰かに見つかったりしたら非常に厄介なことになる。
ネットで買うにしても、そもそもクレジットカードが無いし、
銀行振り込みだとかはよく分からなくて不安だ。

それに受け取りするときに親に見つかったら説明できない。
コンビニ受け取りなどと言う方法もぼくには得体の知れないものに感じて手を出せないでいた。

こうして女の子になりたいという気持ちを悶々と募らせていた矢先、
それはそろそろ文化祭の出し物で何をやろうかとクラスの中で検討が始ろうかという
時期だった。

ぼくは教室の机からほおづえをついて窓越しに見える灰色の空を眺めながら、
例のごとく女の子になる妄想をしていた。

「ねえ、るい君!」

ぼくを呼んだのは、幼馴染の佐倉めぐみだった。
前述した七五三の写真の右側に写っていた女の子で、彼女とも幼馴染みだったが、
小学三年生から四年生に代わるときにクラスを別って以来ずっと別のクラスで、
中学二年生になってからようやく同じクラスになったのだ。

クラスが変わろうが学年が変わろうが、絡まれ続けていたあずさとはうって変わり、
彼女との関係はほとんど失われていた。

それでも、同じくクラスになった時は彼女の方から、
いの一番に声をかけてきてくれて、

しかも「るい君」などと下の名前で呼んでくれたのだ。
こうして彼女との旧交は同じクラスになってから急速に温められた。
彼女の性格は明るくて世話焼きたがりで臆さず、煩わしい遠慮がない。
そういうところが、彼女の良いところだと思う。
彼女は何故か体操着を着ていて、ほかの女子と一緒にいた。

「ちょっとこっちに来てくれる?」

まるでぼくを小型犬か何かのように呼びつけたかと思うと、
ぼくが近寄るや否や、彼女は素早くとびかかるように、女子の制服をぼくの肩に当てた。

「ほら!見て!ぜっっったい似合う!」

「きゃー!ほんと、かわいい!」

「え?なになに?どうしたの?」

わらわらとクラスの女子が周りに集まってくる。
ぼくは最初、彼女たちが何を考えてこんなことをするのか分からなかったが、
しばらくすると状況が掴めてきた。
彼女たちは文化祭の催し物として、男子が女装をして、
女子が男装するして劇を行う、いわゆる男女逆転劇をやろう考えているようだ。

「ねぇ、この服着てみてよ!」

「え?ええ?」

「いいじゃん!面白そう!」

「あははは、見てみたーい!」

佐倉はぼくを半ば強引に隣の空き教室へ連れて行った。
そこは美術の際に使う用具を置いた部屋で、普通の教室の半分ほどのスペースに、
一体使われるやらわからない石膏の胸像や、大きめのキャンバス、何やら梯子のような
木材などがところ狭しと置かれていて、
スタンドミラーもあった。室内は一度塗ったら二度と取れることはなさそうな
塗料だとかシンナー類のケミカルな匂いで充満していた。

佐倉はそこにぼくを連れ込むと、さっさと部屋の左右のカーテンを閉めた。
教室は薄暗くなりなんとも妖しい雰囲気になった。
佐倉は踵を返してぼくの方へ向き、ブレザーとスカートを差し出した。

「はい!どうぞ!」

彼女はぼくがこれを着ることを、さも当然のように思っているようだった。

「いや、はいどうぞって言われても……」

「え~?ダメ?」

全然ダメではなかった。本当は今すぐにでもこれを承諾したいところだったが、
これを表面から喜んで着ることはなかなか出来ないでいたのだ。
確かに女装をしたいというのは願ったりであるが、嬉々としてそれをやると
ぼくの人格を疑われてしまうような気がしたからだ。

「し、仕方ないなぁ……」

ぼくは照れ隠しに顔を横へ逸らしながらも、佐倉の制服から目が離せないでいた。
いかにも仕方なさそうに佐倉の制服を受け取ると、一旦それを置いて、
ブレザーを脱ぎシャツのボタンを外した。

佐倉はその様子を待ちかねた犬のような視線で見ていた。

「あの……できれば外に」

「え?ああ、そっかごめんごめん」

彼女はハッとなり、すごすごと教室から出て行った。
彼女はちょっと天然というか、どこかズレた部分があるが、
ここでもそれを発揮したようだ。
ぼくは佐倉がいなくなったことを見計らうと、佐倉の制服を目の前に広げた。
初めて着る女の子の服。改めて見るとかわいい。ものすごくかわいい。
こうして見ると、女の子の要素の半分は服にあるのかもしれない。

であるならば、ぼくも半分は女の子になれるかもしれない。
佐倉は女の子として標準的な背格好だが、小柄な自分にはちょうど良さそうだった。

恐る恐る、佐倉のブラウスに袖に通すと、なんともいえない甘い香りがした。
それに身を包んだあと、スカートを穿いてサイドにあるウエストのホックを留めた。
その行為が妙に女の子らしい気がした。

男物の服にはサイドにホックはついていないからだ。
本当に自分が女の子になったような気分になってウキウキした。
初めて穿いたスカートは、股下がスースーして妙な開放感があった。
これが女の子がいつもしている格好……。

こうやって女の子の服を着てみて、改めて実感するのが女の子の服の可愛さ具合だ。
女の子はいつもこんなかわいい服を着ているなんてずるいとしか言いようがない。
女の子の服には男の服にはない愛らしさが込められているのだ。
こんな服を着て過ごせたらどれだけ毎日が楽しいだろう。
女装は一度やってみると癖になるといった話をネットで見たことがあるが、
その理由を実感していた。
いつまでもこの服を着ていたい気分にかられた。
なんでぼくは女の子に生まれなかったのだろうと、胸が締め付けられた。

一通り服を着終わると、ぼくは恐る恐る元の教室へ向かった。
しかし、緊張で地に足がつかなかった。なんとか教室の引き戸の前に立ったものの、
自分からそれを開けるのが恥ずかしくて、少しだけ開けて顔だけ覗かせた。
佐倉がそれに感づくとすぐに引き戸を開けて、
ぼくを見やると、感嘆の声をあげて叫んだ。

「きゃー!なにこれー!ぴったり!」

佐倉はぴょんぴょん跳ねて、ぼくの背中を押して無理やり教室内へ押しこんだ。
教室の中へ入ると、どよめきが起こった。

「えー!うそー!」

「どこから見ても女の子じゃん!」

女子はぼくが女装した姿を見て大はしゃぎだった。
微妙に輪に入らずに距離を置いていた男子もどこか顔を赤くして鼻を伸ばして、
チラチラとこっちを見ていた。

さすがにぼくも恥ずかしい気分になり、俯いたり頭を掻いて照れ笑いするのが
精一杯だったが、その一方で心の中ではスカートを靡かせてくるりとターンをしたい
気分だった。

「そうだ!私、るい君の服着ていい!?」

佐倉が思い立ったように言った。

「べ、別にいいけど」

佐倉はぼくの承諾を得ると、ぼくの制服をかっさらうように持ち出して
隣の部屋で着替え、自信満々に仁王立ちして、目の前に現れた。

「はははは!男っぽい!」

佐倉がぼくの制服を着た姿に女子はまた湧き上がった。
男装した佐倉の姿は確かにどこか男らしい感じもしたけれど、
中身は女の子なのでやはり女の子っぽさが見え隠れする。
それが妙に魅力的に見えた。これはこれで新鮮だった。

クラスの女子が両手を一度叩いて思い立ったように言った。

「そうだ!このまま二人とも次の授業受けてみれば!?」

この提案には周りのクラスメイトも何やら面白いことが起こりそうな予感を
もったらしく、大いに囃し立てた。

次の授業は英語で、生徒からは最長老というあだ名で呼ばれている
定年間近の男の先生だった。こういった悪ふざけもこの先生なら怒られることはないと
皆が踏んでいた。

普段の内気なぼくであれば、こんな悪ふざけに参加することもなかったし、
そもそもそんな役割を振られることもなかった。
しかし今は気分が昂ぶっていて、この悪ふざけに一役かってみたくなった。
ノリのいい佐倉は聞くまでもない様子だった。
結局、ぼくと佐倉は格好を入れ替えたまま授業を受けることになった。

授業の時間になると、英語の先生が老体を奮い立たせなんとか階段を登り切り、
ぜぇぜぇと息を切らせながら、ようやく教室にたどり着いた。

この長老の姿はクラスの皆がいつも気の毒な気持ちにさせる。
級長の号令とともに始まりの礼をすると、平常どおり授業は始まった。
クラスの皆がチラチラとぼくや佐倉を見ていたが、先生は気づく様子はなかった。

おそらく若い先生であれば挨拶の時点で気づくだろうが、
長老はそのような些末なことを気に留めることはなかった。

そのまま授業は20分ほど進み、ひょっとするとこのまま最後まで授業は
平常運転で進んでいくのではないかと、クラスの皆が思い始めた時、それは起きた。

「えー、それじゃあ誰かにこれを埋めてもらおうか。それじゃあ……星宮」

このタイミングでまさかの名指しに、どっと笑いが起きた。
ぼくはどうしていいかわからず、その場でもじもじした。

「ん? 星宮、いないのか?」

皆がぼくに注目する。ぼくは恐る恐る立ち上がった。
先生はぼくの方に目を向けたが、先生はそれがぼくだとは気づいていないようだった。

「んん?見かけない子だな? Who are you?」

英語の先生らしく英語で尋ねた。
ぼくもその流儀に応じて英語で返した。

「I'm……Hoshimiya」

「星宮……!? なんでそんな格好しとるんだね?」

先生はメガネをくいっと上げてぼくを凝視した。

「いや……その……」

クラスメイトは全員笑いを堪えるのが精一杯で、
皆、肩で笑っていた。思わず吹き出して腹を抱えて机のうえで悶絶する者もいた。


ぼくも苦笑いするしかなかった。
先生もおどろいた様子で頭からつま先までぼくを見回した。

「一体誰の制服だねそれは……あっ!」

先生は教室を見渡すと、僕の制服を着た佐倉に気づいた。
佐倉もほっぺたを赤くして笑いをこらえプルプルと震えていた。

「このバカちんどもっ!」

歯の隙間から声を出すような先生のツッコミに教室はとうとう笑いで包まれた。

「まったくけしからん!今日の問題は全部お前ら二人に指名してやる!」

先生はそう言うと、黒板に書かれた英文の中で空白を埋める問題を指した。
先生も面白半分に見せしめにしてやろうと考えたのだ。
背後から多数の視線を感じながら、ぼくは黒板の問題に向かった。
皆が女装したぼくの姿を見ている。クスクスと笑い声が左右から聞こえた。

ぼくは緊張で震えた手でチョークを取り、問題に取りかかった。
身長が低いので黒板の上の方に書かれた問題は背伸びしなければならなかった。
もともと学校のスカートは短いものだったし、加えて佐倉よりも
ぼくの方が足が長かったため、背伸びなんてしようものなら、
スカートの下から下着が見えてしまいそうだった。

そのため、ぼくは下着が見えないように、スカートの後の裾を抑えながら、
答えを書こうとした。

すると

(ぷはっ……女の子っぽい……)

(なんか仕草がかわいい)

後ろから冷やかしの声が聞こえて、ぼくは黒板のチョークのを一瞬止めた。
しかし、そのまま続けた。

<だって仕方ないじゃないか、スカートの中が見えちゃうし……>

普通に体育の時間などは下着になって着替えるのだが
(それでもぼくには少々遠慮があったが)、

同じ下着でもスカート中を見られることは我慢できないことだった。
女の子の格好をしている間は、男っぽいことをしたくないという気持ちがあった。
さらに言えば恥ずかしいと思う反面、ぼくの中にはどこか
喜悦的な感情も芽生え始めていた。

結局、授業の終わりまでぼくと佐倉は交互に指名されながら、
そのたびに黒板の前に立たされ、晒し者にされた。

その後、僕たちは元どおり自分の服を着たのだが、
この件は中学二年生の間ではちょっとしたニュースになって、
午後には他のクラスでも広まっていた。

ぼくは岩場にできた穴の中のうみうしの様にひっそりと
静かに目立たない学校生活を送ってきた過ごしてきたのて、
こんなに人に注目されたことは初めてで、

「お前がこんなにノリのいい奴だったとは」だとか
「死ぬほど笑わせてもらったとか」他の人から声をかけられるのは新鮮だった。

ぼくはあの恥ずかしいような嬉しいような感覚に酔いしれていた。
大願が成就して夢心地だった。

しかし、そんなぼくに冷や水を浴びせるような出来事が起きた。
それは放課後、家に帰っている時だった。長いくだり坂を下っていると、
下の方であずさが待ち構えていたのだ。

黒いスカートと長い黒髪が風で波打っていた。
彼女は挑むようにぼくを睨んでいた。重力がぼくを彼女の方へ引きよせていた。
ぼくはそれに逆らいたい気分にかられたが、彼女を前にしてそんなことをしたら、
後でどんな嫌がらせをされるか分かったものではなかった。
ぼくはこれから叱られるために主人に呼びつけられた犬のようにすごすごと、
視線を合わせたり反らせたりしながら彼女に近づいた。

近くに来ると彼女は、今日のことを聞いた。

「あんた、学校でめぐみの服着て過ごしたんだって?」

あずさは腰に手を当てて呆れたようにいった。
ぼくは声を出さず、恐る恐るうなづいた。

「……あんた、嬉しがってたでしょ?めぐみの服が着れて」

「そ、そんなこと……あれも佐倉から頼まれたから……」

「あら、そうかしら?あんたの態度を見ればわかるわ。
 本当はあんただって着たかったんでしょう?
 ただでさえ女々しいのに……気色わるい」

「う……」

嫌悪感を露わにした冷たい視線でぼくに悪罵をあびせる彼女に何も言い返せなかった。
彼女はじろりとぼくを見て言った。

「あんた……女の子になりたいとか思ってるでしょ?」

ドキリとした。彼女に対してはそんな素振りをおくびにも出したことがなかったのに、ピシャリとぼくの内面を言い当てたからだ。

「最近、馬鹿みたいに髪の毛伸ばしてたのも、そういうことだったのね」

ぼくの行動は完全に彼女に見透かされていた。

「何泣きそうな顔してんのよ」

あずさの言う通り、ぼくはみるみる目頭が熱くしていた。
あずさには普段からなじられることが多いけれど、
女装のことについて言われるのはとくに傷ついた。
なぜなら、ぼくが自分を認められる唯一が、それなのだから。
ぼくには他に何もないのだ。

ぼくは泣きそうになり、しゃべることが出来なくなった。
涙が溢れるところを見られる前にぼくはあずさを背を向けて走り出した。

『気色悪い』

ぼくにはその一言が、彼女から今まで受けたどんな仕打ちより、最も辛いものとなった。
あずさはついに、ぼくの中の内に秘めた最後の一つ、
つまり、ぼくがぼく自身を唯一認められる女の子のぼくまで余すところなく
喝破したのだ。

この日、ぼくは家に帰ると布団の中で潜り込んで、様々な思いにかられた。
あずさの言葉とぼくの欲望が交互にシャボン玉のように膨らんでは消えた。

それから数日が経った。ぼくにとってはとても残念な一日だった。
なぜなら、文化祭での催し物として、男女逆転劇をすることは先生によって
却下されたからだ。

詳しい理由は分からないが、ジェンダーだとか性だとかそういった繊細なことに
触れるようなことは出来ないとか、そういう理由なのだろう。
事なかれ主義の賜である。

もし、男女逆転劇が実現したら、また何度も女装出来ると思っていたのだけれど、
それは灰燼に帰してしまった。

あの日以来、ぼくの女装への思いはさらに高まっていった。
それはもう気が狂わんばかりで、恋する少女のように病的に、
すべての思いがそれに向けられていた。

それでいて、それを自分のものに出来ないでいる
ジレンマが心の胸奥で煮えたぎっていた。

このまったくあり得ない、考えられない行動へと駆り立てた。
それはぼくが佐倉の制服を着た日から十日ほど経った日の放課後だった。
ぼくは二人で話したいことがあると言って、佐倉を空き教室に呼びつけていた。

佐倉より先に教室に着いたが、緊張で胸が揺さぶられる思いだった。
静まり返った教室では、遠くから生徒の声が聞こえる以外は、静寂を保っていて、
差し込む夕陽が教室の壁をオレンジ色に仕立て上げ、
机は太陽の光を反射させて眩く光っていた。

5分もたたないうちに佐倉が教室へ来た。
佐倉はぼくの改まった様子を見てよほど大事なことがあると察したらしく、
おどおどとしていた。ぼくは彼女が時間を取ってくれたことに軽く礼を述べ、
すぐに本題に入った。

「このことは、誰にも言わないで」

そう言ったぼくの声は震えていた。真剣な眼差しのぼくに、
佐倉は戸惑いを隠せず、目をぱちくりしながらも首を縦に振った。
ぼくは緊張でカラカラに乾いた喉に潤い取り戻すように
息を飲みこみ、言った。

「ぼくはその……佐倉にお願いがあるというか……」

「お願い?なに?」

佐倉はきょとんとした。

「このあいだの、英語の時間の、あの時が……その」

「うん??」

「ええっと、ぼくにとってあれは衝撃だったというか」

「ほぉ?」

「ああ……要するに……なんというかー」

ぼくの要領の得ない話と落ち着きのなさに佐倉は怪訝な顔をしてぼくを窺った。
やんわりとした言葉で想いを伝えようとしたが、よく分からない言葉しか出て来ず、
足が地上から離れていくばかりだった。

このままでは埒があかないし、彼女に余計な不審感を抱かせるだけだと思い、
ぼくは半ばやけになりながら、ありのままに思いの丈をぶつけた。

「ぼ、ぼく、女の子の服が着たいんだ!」


(二)に進む
このブログについて
小さな女の子のおむつ・おもらしの小説を書いています。
モットーは、ロリ・おしっこ・おもらし・おむつです。

ハンドルネーム:でぃあぱん

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