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ぼくは女装に手を出した(三)

(二)に戻る


「もう……、きちんとおむつして寝なさいよ」

かあさんは濡れたシーツをせかせかとベッドから剥ぎ取り、
吸収しきれずにベッドの上に残ったおしっこの水滴を
そのシーツで拭き取りながら呆れたように言った。

ぐしょぐしょに濡れたパジャマを脱いで母に渡すと
母はそれも合わせてシーツに包んだ。

「そうだ、今日は通院の日でしょ? 忘れずに行くのよ」

「あー、そうだった」

病院とは、心療内科の片桐先生のことだ。
ぼくのおねしょ癖は身体の問題ではなく心の問題らしい。
だから、そういった子供の心の問題などを取り扱うことを専門とした
お医者さんに診てもらって少しでもこのおねしょを軽減できないか、ということで
二週間に一度、片桐先生のところへ通院している。

片桐先生のところへは結構長く通院しており、
小学三年生の頃以来ずっとである。

ぼくは三年生の頃から何故か頻繁におねしょするようになってしまった。
何故、急におねしょするようになったのかは分かってないし、
当時のことについては記憶があやふやでよく覚えていない。

ただ、なんとなくあずさが原因であるような気がしている。
彼女がいつもあんなふうにぼくをいじめるから、きっとストレスがたまっているのだ!
……そう思っている。

ちなみに、片桐先生のところに通ってもおねしょは治る気配はまったくない。

それでも診療所に通うことを欠かさなかったのは、
母親の強い指示によるものだった。

母はぼくがおむつをして寝ていても何も言わないし、
むしろ「おねしょするくらいならおむつしなさい」という感じだが、
それでもぼくのおねしょが治らないことについては親として心配なのかもしれない。

放課後、かあさんに言われたとおり、診療所に行った。

「やあ」

先生はいつも通り、もの静かな様子でデスクの椅子に座っていた。

診察室は六畳ほどで、小さなベッドが横にあり、
壁には体や心の仕組みが云々といったことを
図解で書いたポスターが多少色あせ気味に数枚貼られていて、
先生が座る灰色のデスクの端には沢山のプリント類がところ狭しと積まれていた。
先生はそのプリント類の中からぼくのカルテを探し当ててこちらを向いた。

「先生、実は……」

ぼくは今日の診療よりまず先に先生に聞きたいことがあった。
それはこの間の、夢の時に出たあれが何であるかだ。

昨日の夜以来、ずっとあのことで不安な気持ちに駆られて仕方がなかった。
先生にちょいとそれを話して一言見解をもらえたらぼくも安心できると思ったのだ。

かなり恥ずかしい気分ではあったが、
それを抑えてぼくは昨日のことを先生に打ち明けた。
先生はぼくが話し終わる前に早々に察しがついていたようだ。

「それは夢精だね。君も大人の仲間入りだな」

予想通りの答えが返ってきた。
先生はぼくを安心させるように朗らかな口調でそれを伝えたが、
それがやはり夢精であったことに、ぼくは気分が沈んだ。

ぼくからすれば、むしろ他の病気の方がまだ気が楽だったのだ。

「やっぱり、そうなんですね……」

「ん? なんだか落ち込んでいるね?」

先生はぼくの顔を覗き込んだ。

「……なんていうか、急だったから……こんなこと体験するなんて……。
 ぼく……まだ大人にはなりたくないんです」

「ほう、それはどうして?」

先生は興味深そうに尋ねた。

「なんていうか……その、夢精……したとき、すごく悲しい気持ちになりました」

「それは何故かな?」

「よく分からないんですけど、何かを無くしてしまったような気がして……」

先生はフムと顎を当て、すこし間を置いたあと

「ま、初めての時は不安になるよね。 先生だってそうだったんだよ」

と言った。


「そうなんですか……」

うなだれたぼくの肩に先生はポンと手を置いて少しゆすって、なだめるように言った。

「皆経験することだからね。あまり気にしなくていいんだよ。
 ま、何か異常や不安を感じたらいつでも相談してね」

「はい……」

「うん。それじゃあ診察しようか。最近、おねしょは?」

「相変わらず……です。今朝もしてしまいました」

先生は小さくうなづくと、体をぼくの方に向け、
目に力を入れてここが要点であると言わんばかりに言った。

「前にも何度か言ったけれど、おねしょをしてしまう子には
 心因的な問題を抱えている子が少なくないんだよ。
 例えば受験のストレスとか、クラスでうまくいっていないとか、
 将来を不安に感じているとか、 思春期の頃は特に心が不安定になりやすいからね。」

「まぁ、そういうのは無くもないですけど、人並みなんじゃないかと……」

「ふむ。最近変わったことは?」

「……特に……ないですけど」

ぼくは女装のことについては黙っておいた。
いくら先生でも、このことについては話す内容ではないと思ったからだ。

「フム……」

先生は続けて、もっと深く聞き出したいことがあるようで質問を重ねた。

「ガールフレンドとは上手くいってるかな?」

「あずさのことですか?この間も酷いことを言われました。
 『気色わるい』って。……何故そんなことを言われることになったのか、
 理由はちょっと言いたくないですけど……」

こうやって話しているうちに、あの時の憤りがふつふつと蘇ってきた。

≪そうだ、何も『気色悪い』だなんて言わなくてもいいじゃないか!≫

「……」

「君が話したくないのならば無理に話すことはないよ」

ぼくの憤りを感じ取ったのか、先生はそのことに深く触れようとはしなかった。
先生は眉間にシワを寄せ、深妙な表情をしたが、
そこから話が先に進むことはなかった。
その後はなんでもない雑談をして診察は終わった。

診療所から出て、家路につくと五分もしないうちにぼくは道端で足を止めた。
前にあずさが立っていたのだ。どうやらぼくを待っていたようだった。
彼女はぼくの存在に気づくと後ろ髪をかき分けてゆっくりとぼくに近づいてきた。

「あんた、まだここに通院してるんだ?」

「おかげさまでね」

彼女を無視して家の方角へ歩いた。
ぼくが彼女に強気にでるのは珍しい。
先ほどの怒りの残滓がぼくをそうさせたのだ。

しかし、あずさはぼくの態度に怯むどころか逆に好奇心を抱いたようで、
今から何か楽しいことが起こるとでも言わんばかりに、
興味深そうにぼくの前に回り込んで言った。

「おかげさまって、どういうことかしら?」

ぼくはあずさに目を合わせないまま彼女を避けて押し黙って足を進めた。
しかし、彼女も懲りずに無邪気な笑みを連れてぼくについてくる。


ぼくは無視することで抵抗の意思示したが、次第に目頭が熱くなってきた。
本心ではこういうことをしたくなかった。
あずさとはなんだかんだで幼なじみだし、本当はぼくは彼女と仲良くしたかったのだ。

でも、あずさがこんな風だから、
ぼくは自尊心を守るためにもこうせざるを得なかった。
疚しさと、意地がぶつかり合いがぼくの瞳を潤ませた。

それでも、ぼくは息を整えて涙を抑え、
もう彼女の言うことに、絶対耳を貸さないと決意し、
憤然と前を向いて彼女の横を通り過ぎた。

「あんた、まだ女の子の服着たいと思ってんの?」

「……」

ぼくは無視を続けて歩調を早めた。
彼女は立ち止まり、ぼくの後ろ髪を引くように言った。


「そんなに女の子の服が着たいなら……私の服あげようか?」


「……えっ?」


ぼくは思わず足を止めた。


「嘘よ」


あずさはぼくの心を弄ぶことにかけては天才だった。

ぼくの心の隙間を見つけて、
そこからいとも簡単にぼくの決意を踏みにじるのである。
これには大人しいぼくも激憤に駆られずにはいられなかった。

「なんなのさ、一体!? なんであずさはぼくにこんないじわるするの!?」

ぼくは絶叫した。


「あんたさぁ。いくらあんたが女装したって、
 女の子にはなれないんだから、諦めなさいよ」


「あずさに関係ないだろ! ほっといてよ!!」


ぼくは逃げるように走った。涙の玉が瞳からこぼれた。
自分が恥ずかしくて仕方がなかった。


一瞬でも彼女の甘言に耳を貸したばかりに、
さっき決めたばかりの決意に水をぶっかけられて笑われたのだ。

だがしかし、あずさの言葉は逆効果だった。
ぼくの逃げ道は女装以外になくなっていた。

ぼくの心を癒してくれるものは女の子の服以外になかった。
それがなければ、ぼくには何もなくなってしまうような
そんな気分にさえなっていた。

もうそんなところまで、ぼくの女装願望は強くなっていたのだ。

夜、ベッドの中にうずくまって本日の傷心に浸っているうちに、
(寝る前は大体そうするのが、ぼくの癖なのだ)
女の子の服が恋しくて愛おしくてたまらなった。

女の子の服を手元に置くとなると、親に見つかったりする危険も伴うが、
ぼくの欲求はもはやそのリスクを打ち超えていた。
抱いていた空想を現実のものにする時が来たのだ。

≪女の子の服を買おう!そうだ、佐倉に一緒についてきてもらって
 どんな服買えばいいとか、相談してみよう!≫

ぼくは再び固い決意を胸に秘めて眠りについた。


――その日、ぼくはまた夢を見た。

土砂降りの雨の中、ぼくは小学生の頃に戻っており
ランドセルをからって大きな川の傍にある河川敷を歩いていた。

この川には見覚えがある。
ぼくの家から歩いて十五分ほどにある川で、
小学校への通学路だった。

いつもは穏やかで晴れの日は家族がひなたぼっこに来たり、
健康志向のおじさんなどにもランニングスポットとして人気を博しているこの川であるが

夢の中では雨のせいで増水して泥を含んで茶色く染まっており、
大きなうねりを伴いながら力強く流れていた。

向こう岸は巨大な鉄塔がいくつも立ち並んでアーチを作り、
その根元には黒い森が世界を塀のように囲んでいて、
ぼくを漠然と不安な気持ちにさせた。

この夢は何故かよく見る。
そして目が覚めると決まっておねしょしているのだ。


今もこうしておねしょという単語を思い浮かべると、
夢の中で強い尿意を感じ始めてきた。

≪ああ、このままだとおもらししちゃうな……、でも、
 この雨の中だし、このままおもらししちゃってもいいかも……≫

夢の中のぼくは尿意に寛容だった。

≪温かい感覚が広がっていく……なんだか気持ちいい。
 あっ、おしっこがスボンから溢れてくる……≫

スボンから滴り落ちるおしっこを追ってくるぶしに視線を置くと、
いつの間にか川が増水して流れが足首にまで及んでいた。

水はおしっこと同じくらいの温度になっていて気づかなかったのだ。
ぼくはパニックになり、川の流れから這い上がろうとするものの、
水かさはどんどん増えていき、膝から胸へあっという間に到達した。

≪助けてっ!誰か助けて……!≫

なんとか顔を水面の上にしてもがきながら助けを呼ぼうとするが、
それも虚しく、水かさはとうとうぼくの首を超えて口に流れ込んできた。

≪苦しい!溺れる!!≫

とうとう足が地面から離れ、激流に飲み込まれた瞬間、はっと目が覚めた。

部屋の中はこの間射精したときと同じように真っ暗で、まだ夜中だった。
あたりは静寂に保たれており、時計がコツコツと秒を刻む音だけが響いていた。
ぼくの体は全身、汗でびっしょりとなっていた。

パジャマの上からおむつに手を当ててみると、
どうやら大量におねしょしてしまったようで、
おむつがもっちゃりとして吸収量の限界近くまで
大きく膨らんでいるのが分かった。

≪寝る前に少し水を飲みすぎたかな……≫

おむつの容量的には穿き替えないとまずいところだが、
まだ夢の恐怖の余韻が残っており布団から出ることが出来なかった。

ぼくは部屋の電気をつけたうえで布団をかぶり体を丸めて、
おむつの重みを感じながら再び目を瞑った。

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Secre

Re: タイトルなし

>秋月咲夜さん
見てくださってありがとうございやす!!
他のに比べて反応が少ない作品だったので失敗したかなーと
思っていた矢先のコメントで大変嬉しいっす!

申し訳ないですが、諸事情ありLINEは出来ないので
ツイッターの@diapamperまでご連絡いただけると幸いです!
このブログについて
小さな女の子のおむつ・おもらしの小説を書いています。
モットーは、ロリ・おしっこ・おもらし・おむつです。

ハンドルネーム:でぃあぱん

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Twitter:@diapamper

近況や更新情報などをつぶやいております。
また希望シチュ・感想・批評なども受け付けております。
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※おむつ・おもらし関連限定です。m(_ _)m
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